モノクロ写真は、かっこいい

Lee Loo オンラインギャラリー 隠れた名作に出会える 写真のこと

Lee Loo でご紹介している写真家・遅道の作品。出展する作品がようやく決まり、まもなく販売を始めます。すべて、モノクロの写真です。

その前に少しだけ、「モノクロ写真の魅力」について、わたしの言葉でお話しさせてください。実はわたし自身、以前は写真を撮る仕事をしていました。

わたしが写真を撮っていた頃のこと

スクールフォトと呼ばれる、学校行事全般の子どもたちのスナップ・個人写真や集合写真。そのほかに、美術団体の印刷物に使う作品撮影。2025年まで、カメラマンと営業の仕事をしていました。

その頃のわたしは、モノクロと「向き合う」というより、自分の目に見えた景色を——なぜそう撮りたいと思ったのか、その意図を——モノクロという表現を通してどうすれば一番伝わるのか、そればかりを考えて撮っていました。カラーではなく、あえてモノクロを選ぶ。そこには、いつも理由がありました。

色がないから、見えてくるもの

人物を撮るとき、あえてモノクロにすると、余計な色味がない分、肌の質感や表情のひとつひとつが強く印象に残ります。なぜかというと、色という情報が減った分、見る人の目が「その人そのもの」に向かうからだと思います。

さらに、光と影のあたり具合によって、どこか哀愁の漂うような情緒が生まれます。明るさと暗さだけで語るからこそ、静かな感情が伝わってくる。それがモノクロの魅力だと、わたしは感じています。

笑顔だけを集めた、モノクロの写真集

わたしの好きな写真集に、「Smile&Smile 100のほほ笑み」があります。ここに載っている笑顔は、すべてモノクロ写真です。

同じ「笑顔」でも、その表情も、どんな気持ちで笑っているのかも、ひとつずつ違います。不思議なことに、見ているうちに、その人がどんな背景を抱えて笑っているのかまで、ゆっくりと見えてくるような気がするのです。色がないぶん、想像の余白が残されている。だからこの写真集が、わたしはずっと好きなのだと思います。

遅道の写真、その黒の強さ

では、遅道の写真はどうでしょうか。遅道の白黒写真を前にして、キュレーターとしてまず惹かれるのは、黒の力です。粒子の粗さと、黒の色味の濃さ。画面の奥から静かに迫ってくるような、強い黒です。

モノクロというと、白と黒だけのように思われがちです。けれど、黒にもいろいろな色があります。薄いグレーに近い黒、青みの強い黒、赤みを帯びた黒。同じ「黒」と呼んでも、その表情はまるで違います。遅道は森山大道さんを深く尊敬していて、その影響もあってか、黒の強さが作品にはっきりと表れています。

そして構図——写真の切り取り方に、ストーリー性を感じるものが多いのです。何が写っていて、その外側に何があるのか。写っていない部分にまで、想像がふくらみます。一枚の白黒写真が、見る人の数だけ物語を持つ。そんなふうに想像しながら見ると、遅道の写真はぐっと奥行きを持ちます。

遅道のモノクロ写真 ─ 夏の雲が印象的なスナップ
遅道のモノクロ写真 ─ 雨のスカイツリーと足早に歩く人々

こうした強い黒の表現は、撮る道具の個性にも支えられています。たとえば、森山大道さんが愛用したことで知られるリコーの「GR」というカメラは、独特の黒の深さとコントラストで人気があります。遅道の写真の黒が気になった方は、少しのぞいてみるのも面白いかもしれません。

「なぜかっこいいのか」を、自分に問いかけてみる

理由はよく分からないけれど、モノクロ写真をかっこいいと感じる。理由を言葉にできないまま、それでも目が離せなくなる。情報が少ないぶん、足りないところを自分の想像で補っているからかもしれません。そういう瞬間が、きっと誰にでもあると思います。

もしよければ、この記事を手がかりに、「自分はなぜ、これをかっこいいと思うのだろう」と、一度問いかけてみてください。その「なぜ」を深掘りしていくと、自分がどんな作品に惹かれるのか、その共通点が少しずつ見えてきます。

そうして見つけた「好き」の共通点に当てはまる一枚を、ここ Lee Loo で見つけてもらえたら、これほど嬉しいことはありません。遅道のモノクロ写真も、まもなくお披露目します。

── Lee Loo 恭子

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