廃校の下駄箱に、世界の作品が宿る ─ 第12回 ゲタ箱展のこと

Lee Loo オンラインギャラリー 隠れた名作に出会える アートを訪ねて

わたしがこの展覧会を初めて知ったのは、2022年の6月のことです。当時、前職の印刷会社に勤めていて、仕事のご縁で大田原市まで足を運んだのが始まりでした。

廃校となった中学校の校舎の扉をひらくと、エントランスから室内にかけて、彫刻を中心としたアート作品が静かに並んでいました。栃木の山すそに残る、かつて子どもたちが通っていた学校のなかに、現代アートが息をしている。そのギャップが、不思議なほどじんわりと胸に刺さったことを、今でも覚えています。

下駄箱を、展示棚に

「ゲタ箱展」という名前は、展覧会の仕組みをそのままあらわしています。

旧両郷中学校の昇降口にある下駄箱。そのひとつひとつのマスに、作家の手から生まれた作品が収まっています。ガラス越しにのぞいていくと、小さな彫刻、絵画、オブジェ……それぞれが小さな世界をつくって、静かにそこにいます。

入り口でその景色に気づいたとき、ワクワクが止まりませんでした。手前の下駄箱を眺めながら、奥にはまた別の大きな作品たちが待っている。そのことに気づいて、先へ先へと足が向かいました。

廃校という場所のこと

会場となっているのは、大田原市芸術文化研究所です。2014年に開所したこの施設は、閉校した旧両郷中学校の校舎をそのまま再生した場所です。廃校といっても、建物自体が端正な造りで、その空間にはどこか落ち着きがあります。

かつて子どもたちの声であふれていたはずの廊下が、静かになって、世界中の作品を宿している。その対比が、ここで出会う作品の見え方を、ほんの少し特別にしてくれる気がしています。

12年目の、世界が集まる場所

ゲタ箱展は2015年度から毎年続いてきた展覧会で、今年は第12回目を迎えます。今回の出品作家は国内外あわせて約120名。中国、韓国、フランス、ブラジル、メキシコ、ポルトガル、台湾、アメリカ、北マケドニア──9つの国と地域から、作家たちがこの栃木の地に作品を寄せています。

小さな下駄箱のマスのなかに、世界が集まっている。そう思うと、ひとつひとつの扉をひらくことが、少し特別な行為のように感じられます。

展覧会の概要

第12回 ゲタ箱展(12th The Shoes Box Exhibition)

会期:2026年6月13日(土)〜 6月28日(日) 時間:10:00 〜 16:00 会場:大田原市芸術文化研究所(〒324-0206 栃木県大田原市中野内580) 入場料:無料 お問い合わせ:TEL/FAX 0287-59-0004

第 12 回 ゲタ箱展 2026 ポスター 大田原市芸術文化研究所
第 12 回 ゲタ箱展 出品作家一覧 第 16 回 芸術文化研究所研究員展 大田原市芸術文化研究所

次回の後編では、この展覧会ならではの「楽しみ方」をもう少しお伝えしようと思っています。入札のこと、五感で楽しむ鑑賞のこと、そして今年わたしがひそかに楽しみにしていることも。

── Lee Loo 恭子

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