前編では、第 12 回ゲタ箱展に出展されている一部の作家さんをご紹介しました。
後編では、ゲタ箱展のほかの作家と、大田原市芸術文化研究所 そのものの魅力についてお伝えします。

上月佳代さんの「オレンジグレー」

上月佳代さんの作品は、ゲタ箱の中に展示されていました。上月さんも二紀会の方で、わたしは直接の面識はありませんが、いつも作品を拝見しています。
今回の作品のタイトルは「オレンジグレー」。他の作品にも、オレンジグレーやホワイトグレーといった色のような名前のタイトルが多いんです。
わたしの想像ですが、見た目の色がタイトルになっているのではなく、たとえば作品のモチーフになっている人の心情や、目に見えない内面などの「内側」の部分を表現しているのかな、と思って見ています。
言葉での表現が難しいものを作品に込めているように感じて、うまく言えないのですが、想像をかきたててくれる構成にとても惹かれます。
日原公大先生のテラコッタ

日原先生の作品は、ショーケースの中に展示されていました。日原先生の作品は、昔の神話に出てくるようなモチーフのものが多く、そのどれもがとても繊細でありつつも力強いです。一度見たら忘れられないくらい印象に残ります。
繊細さは特に、指の第一関節の細かな動きや、体の曲線美に表れていて、本当に美しいです。
少し前にご本人とお話をしたとき、若い頃には一日に 1 体、仏様を手びねりで作るという目標を立てていたと教えてくれました。おそらく今回の作品も手びねりで作られたと思うのですが、先生の丁寧さと器用さには驚きます。
ここからは、ゲタ箱展の作品ではないのですが、1 階のゲタ箱展示エリアより奥のスペースに展示されている、芸術研究所内の作品をご紹介します。
市村多摩美さん(所長)のひつじ

市村多摩美さんのひつじの作品は何度も拝見していますが、いつ見ても表情がとてもリアルで、色の独創性も魅力的です。
彼女は紙を使って制作することも多い作家さんで、素材の質感と独自の感性から生まれる色彩感覚がとても素敵なんです。色を塗るときに「コーヒー」を使うこともあると聞いたことがあります。リアルなのに不思議と心地よく見ていられるのは、素材の質感を感じられる作品だからかもしれません。
市村さんは今年度から芸術研究所の所長に就任されました。これからさらに忙しく活動されると思いますが、わたしは彼女のファンであり、作品も購入させていただいているので、心から応援しています。
阿久津まみさん(研究員)の漆作品

阿久津まみさんとは、以前研究所でお会いしたことがあります。今回もこちらを覚えていてくださって、作品の説明をしてくれました。
うずらの卵を砕き、ひとつずつ形を選びながら貼っていったというエピソードを話してくれました。気の遠くなるような作業を最後までやり抜く強さが、作品の美しさに反映されているのだと思います。
阿久津さんも猫を飼われていて、漆の臭いが猫の体に害になるからと、ご自身が押し入れに入って漆塗りをされていたこともあるそうです(笑)。研究所で広々と作家活動に専念できる環境ができたことを、わたしもうれしく思います。
阿久津さんは漆造形だけではなく、陶彫の作品も手がけられているので、二つの素材を行き来する作家活動をこれからも追いかけたいと思います。
芸術研究所そのものの魅力

ここまで、ゲタ箱展の作品と常設展示の作品をご紹介してきましたが、大田原市芸術文化研究所 は通常時にも展示を無料で楽しめる施設です。
まず、大田原市の黒羽(くろばね)で現代アートをじっくり鑑賞できることが大きな魅力です。これまでレジデンスでお迎えした外国人作家の作品も展示されているので、見応えがあります。
建物がとても近代的なつくりなので、現代アートを展示すると、建築物としての美しさもより際立って感じられます。
ゲタ箱には入らない大きな作品や、個展などでも搬入が困難で展示できない大作も展示されているので、ぜひ見ていただきたいです。
実際に展示されている作家さんとお話しできる機会もあります。聞いてみたいことを作家さんに直接聞けるのも、芸術研究所ならではの魅力ではないでしょうか。
第 12 回ゲタ箱展は、2026 年 6 月 28 日まで開催されています。お近くの方も、少し遠くの方も、ぜひ足を運んでみてください。
Lee Loo の Artists ページ では、Lee Loo に出展してくださっている作家もご紹介しています。

