先日、Lee Loo では動物をモチーフにする彫刻家をご紹介しました。その記事で少しだけ触れた 第79回 栃木二紀展 に、実際に足を運んできました。
会場は、栃木県総合文化センター2階の第4ギャラリー。今回は、そのレポートをお届けします。

一つひとつが、主役として
会場に入った瞬間、まず感じたのは空間のゆとりでした。
広々とした展示室の壁面には、F150号という大きな絵画が、一つひとつゆとりを持って掛けられています。立体作品は、その絵画に囲まれるように配置されています。照明は明るく、壁は白で統一されている。だからこそ、作家一人ひとりの作品が、まるで主役のように見えました。
そして入った瞬間から、顔馴染みの作家さんたちの作品が、すぐに目に飛び込んできました。
市村多眞美 ─ 小さくても、市村さんの世界
先日ご紹介した 市村多眞美 さんの作品は、「AZUL」というミクストメディアの作品です。
いつもは迫力ある大きな作品を拝見することが多いのですが、今回はサイズが小さめ。それでも、市村さんの得意とする、さまざまな素材の質感を保ちながら動物の表情を表現するという持ち味は変わりません。青みを帯びた鳥の頭部に、市村さんらしさがしっかりと出ています。

角谷琴音 ─ 今にも動き出しそうなキツネ
角谷琴音 さんの作品は、「眼差しⅡ」。今にも動き出しそうなキツネの作品です。
座って顔を上げたキツネの、毛並みの一本一本まで感じられる質感。そして何より、注目していただきたいのは「眼」の輝きです。この眼があるからこそ、キツネに命が通っているように見えるのだと思います。


改鉄成 ─ 金属が伝える、生命力
改鉄成 さんの作品も、今回は大きな作品ではありません。
それでも、鉄・銅・ステンレスといった硬質な金属で作られた作品は、存在感がとてもあります。金属という冷たい素材でありながら、動物の生命力の強さが伝わってくる。そこに改さんの力を感じます。


「これは」と足を止めた作品
先日ご紹介した3人以外にも、足を止めた作品がありました。
一つは、絵画の 株田昌彦 さんです。M200号の大きなキャンバスに、アクリルで細部まで繊細に描かれた「濾過装置」という作品に目が行きました。
株田さんの絵は、いつ拝見しても、設計図のような線がとても多く、細かい。どうやって描いているのだろうと不思議に思うほど、細部まで丁寧に表現されています。しかも、装置が長年使われて古びたような様子まで再現されていて、その色彩感覚にも驚かされます。


もう一人は、彫刻の 川島史也 さんです。二紀会を引っ張る若手彫刻家の一人で、現在は筑波大学芸術系の助教も務めています。
川島さんは、漆・砥の粉・麻布を使って人物を制作している作家です。彫刻の素材から感じ取った「人物彫刻の在り方」を、たくさんの作品に表現していて、多くの賞を受賞している実力の持ち主でもあります。
人物彫刻というと「ありきたり」と思う方もいるかもしれません。けれど川島さんの作品は、人物の表情の一つひとつを研究しながら制作しているように感じます。

会場で見るからこそ、分かること
作品の大小に関わらず、存在感を感じたり、魅力的に映る作品は、人それぞれだと思います。
それはやはり、会場で作品を鑑賞するからこそ感じ取ることができるもの だと、わたしは思います。写真や画面では伝わらない何かが、実物の前には確かにあります。
アート鑑賞の、入り口として
現代アートの魅力の一つは、表現の自由さだと思います。
大きな美術展に足を運ぶのは少し敷居が高い、と感じている方もいるかもしれません。でも、そういう方にとっても、二紀展はアート鑑賞の入り口としてカジュアルに感じられるはずです。
栃木二紀展は8月19日まで。そして10月には、全国の作家が集まる二紀展が、東京・六本木の 国立新美術館 で開催されます(10月14日〜26日)。気になった方は、ぜひ実物を見に、足を運んでみてください。
Lee Loo でご紹介している作家は Artists 一覧 からご覧いただけます。
── Lee Loo 恭子

